日本語フォント使用許諾契約比較

パッケージ販売の時代にはパッケージにいわゆるシュリンクラップ契約がついているものだったけど,ダウンロード販売の時代になり,使用許諾契約の表示箇所がマチマチになり,比較検討が面倒になった。しかし,許諾の内容はファウンドリーごとにかなりの差があり購入前の確認は必須。比較の一助として代表的なファウンドリーの使用許諾契約のリンク集を作成した。また,筆者の簡単なまとめ,および感想をつけてみた。

注意事項

これは2009年12月19日時点の調査によるものです。各ファウンドリーの使用許諾契約の将来にわたる内容を保証するものではありません。また,感想は調査者の主観にすぎません。必ずしもその内容を保証するものではありませんし,各ファウンドリーの見解と異なることがあります。さらに,この記事を利用したことによるどのような損害も保証しません。詳細については必ず契約前にファウンドリーにお問い合わせください。

字游工房

字游工房_游書体ライブラリー_ライセンスについて
アナログ出力,ゲームを含む映像コンテンツ,デジタルコンテンツ(おそらくWebとかCD-ROMとか)のための
文字の埋め込みを許可している。
ただし,そのコンテンツ内で使用されている文字に限るとの条件がついているため注意が必要。
フォントの太め,斜体,シャドウ処理などの変形をわざわざ認めているのがめずらしい。

タイプバンク

使用許諾 - TypeBank
ゲームソフト,放送(TVのことを指すと思われる),アプリケーションの専用表示(UIなどのことを指すと思われる),などは別途契約。
「その他,デジタルデータとしての配布を目的として本製品に含まれる書体を利用する場合」も別途契約とあるので,Web領布用のPDF,もっといえばHTML文書などでの使用が可能かどうか不安。
また,禁止事項の1に「第三者に利用させる目的で、本製品から文字情報を取り出すこと」ともあるので,例えばアウトライン化した文字データを,オフィス内の別PCのユーザに渡すことも契約違反にならないか気になる。

大日本スクリーン製造

千都フォント|ライセンス|CreativeシリーズV7.1/Ver.8.0の使用許諾について
「デザインの加工および変更/改訂を行ってデジタル出力およびアナログ出力」することが許諾されている。
映像コンテンツのテロップ,デジタルコンテンツに使用可。
興味深いのは映像コンテンツ,デジタルコンテンツの場合,契約期間内に制作したコンテンツは,契約終了後にも販売,領布できると明示している点。

Adobe

ソフトウェア使用許諾契約書
Adobeは日本語以外のフォントも販売しているため,こちらは日本語フォントのみのライセンスな点に注意。
とにかくレイアウトがものすごく読みにくい。
Adobeの多くのソフトウェアと同様に,2台目のPC(ポータブルコンピュータまたは自宅のコンピュータ)へのインストールを認めている点が興味深い。ただし,使用できるのは同一ユーザのみで,同時使用は当然不可。
バックアップは1部しか作成できない。これは例えばMacでTime Machineを使用している場合に,ディスクユーティリティ.appなどを使用して別途バックアップを作成した場合に契約違反にならないか心配。
他国への出荷,譲渡,輸出することを禁じている。北朝鮮国民も使用できない。使用するには北朝鮮国民でないことを表明および保証しないといけない。
これは非日本語フォントを念頭に置いた条項だと思うが,RIPへのダウンロードを許可している。
同様の理由で,印刷業者やサービスビューロへの引渡しも許可されている。

イワタ

サイト内に使用許諾契約を発見することができなかった。2006年8月ごろにダウンロード購入した時は,購入手続き後にダウンロードされた圧縮データの中にライセンスがテキスト形式で含まれていた。

当時の内容で気になる点は以下の通り。
「日本国内でのみ使用することができる」とあり,輸出だけでなく海外での使用自体も禁止されている。
「一台の装置にのみインストールことができます。これ以外のいかなる方法によっても許諾プログラムを複製しないものとします。」とあるがバックアップが含まれるか気になる。
この2点について当時問い合わせたところ,営業部の方から,これらの条項は不正使用防止のためのもので,海外への持ち出し,海外での使用,バックアップは問題ないとの回答を得たが,明文化されていなければやはり不安かもしれない。

フォントワークス

サイト内に使用許諾契約を発見することができなかった。

リョービイマジクス

法人向け商用利用許諾のみ発見できた。
RYOBI > 印刷機器 > フォント > 商品利用(テロップ等)
テレビのテロップ,ゲーム,はもちろんのこと,「占いをインターネットで配信した際」,携帯コンテンツ,物品やサービスの売買を行うホームページでのご利用,広告収入を得ているホームページでのご利用,PDFでのご利用(営利目的)も追加契約となっている。

モリサワ

使用許諾に関して | フォント製品 | 株式会社モリサワ
モリサワはフォントの形式ごとだけでなく,PASSPORTの契約時期によっても異なった使用許諾を持っている。
どれも長くて,すべて比較する時間がないので,個人的に気になるPASSPORTの認証版(2009年秋以降に配布されたものだと思われる)について読んでみた。
面白いのは,「印刷版下の作成、 印刷、表示等の方法により複製(出力)すること」と併記して「思想・感情の表現手段として利用すること」も認められている点。著作物すべてということなのだろうけど,おもしろい。
映像,ゲームでの使用も可。成果物のインターネットでの送信可能化,公衆送信も可。成果物の展示,譲渡,貸与も可。
商業利用については下のURLの別ページを設けて「特別な契約およびそれに伴う使用許諾料を別途に必要と致しません」といっており,比較的規制が緩い。
商業利用に関して | フォント製品 | 株式会社モリサワ(リンクされている契約書は同じもの)
注意しないといけないのはフォントに含まれるマニュアル等のコピーも不可。
「本契約により許諾され、ライセンス証明書等にて指定される範囲で 使用されるために、如何なる技術的手段をも適時追加することができる」としており,最近モリサワアクティベーションを導入したが,今後さらなる手段の追加の可能性を留保している。

モトヤ

一次使用と二次使用のご説明
商用二次使用の参考価格
なんと印刷以外の目的での使用はすべて追加契約。WebもPDFエンベッドも! それ以外は1台のみということと,ディスアセンブルや改変の禁止しかない簡素な契約。とにかくモトヤが「二次使用」といっている商用印刷物以外の媒体への追加料金が契約の主眼になっている。非商用についての記述はなし。